経済を 叱れ

 飯田橋の事務所に行って、今後のことをいろいろ確認する。
 地下鉄は、普通に動いている。本数は少ないらしいけど、待っていたらちゃんと来る。これ以上、贅沢は言えない。

 この先、厚木での用事がいろいろあったのだけど、今、そこまで簡単に移動できないので、数日はじっと様子を見るしかない。まあ仕方ない。
 とにかく仕方ないんだ。

 誰ひとり、こんなことを望んだことじゃない。同じ絵の繰り返しになってきたテレビは、そろそろ現状報告に飽きて来たらしく、何かの犯人捜しを始めているけど、

 安全な場所にいて、お手軽な批判を語ることで、自分を売り込むことに必死のコメンテイターとか、ようやく巡ってきた目立てるチャンスに浮き足立ち、自論に酔っている研究者とか、専門家たちに、苛立つ。

 商売始めるのは、まだ早えってば。
 もう少し我慢しろよ。見苦しい。
 
 繰り返しになった絵の向こうで、今、被爆の危険をモロに受けながら、原子力と闘っていたり、絶望的な光景の中、生存者を捜していたり、ガレキと格闘している人たちがいるんだ。
 ハリウッド映画じゃないんだから。手軽なカタルシスや、勧善懲悪なんかそこに求めちゃいかんだろう。
 ひたすらのリアリズムを、じっと受け入れる時だ、今は。

 そんな合間にも、都内でトイレットペーパーが買い占められて足りなくなっているとか、株が暴落しているとかのニュースも挟まってくる。

 これもまた、心が擦り切れる。

 ワシが子供の頃あった石油ショックの時、なぜかトイレットペーパーが奪い合いになって、パニックになった。
 結局、実のところただの、集団ヒステリーだった、と後日判明したはずだった。
 40年ぐらい経っているのに、何も進化していない。
 
 また
 株が暴落して、この先、日本経済がヤバイから、早く財政再建案をとか、言うジャーナリストとかもいる。
 仰せごもっともなんだろうが、
 今はどうでもいいだろう、銭のことなんか。
 
 思っても言うなよ、と思う。

 今は金を持っている人たちが、貸し借りとか、損得とか、そういうこと度外視で、困った人たちに、どうぞと差し上げるべき時だ。

 大地震も、この資本主義世界のなかでは、
 戦争と同じように経済活動の絶好のチャンス
 には違いないだろうけど

 そんなこと考えて、この状況を生きている、そのことがどれほど憐れで浅ましいことか、

 我々はそこまで堕落してしまったのか。

 とはいえね、

 かくいうワタシも、今さっき、昨年から突然株主になった、例の第一生命株の値をチェックして、先週十七万まで付いてたとこで、売っておくべきだった、とか深く悔やんでいたのだがな。

 でも思えば生命保険会社も、

 ここが最も辛い時であろう。
 そして、その実力とガッツが問われる局面だ。

 ワタシは、こんな時、第一生命の株価をチェックして舌打ちしてしまった、己のセコさを恥じる。

 第一生命様に、ずっとメセナ支援で劇団を助けて頂いてきた身として、いやそれ以上にこの国難にともに立ち向かうべき同胞として、
 こんな時こそ、決して株を売らずに、頑張ってくれ第一生命、ワシは諸君を信じるぞ、とエールを送らなきゃイカンと思い直した。

 世界のあぶく銭に寄生して生きる、海外投資家は、大いに売ればよい。
 好きなだけ日本を叩き売れ。
 そして一国も早く我が祖国から立ち去ってくれ。
 
 だが言っておく、
 我々は、こんなことに決して負けない。必ずチカラを合わせて、更に逞しく起ち上がってみせる。
 今ひとたび沈むとも、必ずや蘇る旭日の如く。
 それこそが大和魂なんじゃ。

 そんなタンカを切ってくれる、侍のような経済人はいないのか。

 と思ったら、ユニクロの社長とか、楽天の社長とかが、個人で十億寄付だって。
 
 金持ちは痛くもかゆくもないんだろうとか、皮肉るのはやめよう。
 それだってたぶん楽に儲けた金じゃない。
 それに金持ちほど、ケチな人種はいないんだから、普通はな。
 素晴らしいことだよ。

 どちらも一代で城を築いた戦国武将のような殿様が率いる、新興企業だ。
 この国で、長く商売をしてきた、老舗の大企業は他にもたくさんあるのに。
 
 まさか、今この時に、そういう企業が、この先の商売のことなんか考えてないだろうな。

 もし、そんなことであったら、この国は、本当に滅びることになるだろう。というより、一度、滅んだ方が良いと思う。
 
 我々の心が試されていてもいるんだ。
 
 貧乏劇団扉座も、ごくごくわずかながら、被災地に、寄付を送らせて頂きます。
 東北地区は、我々の芝居を何度も呼んでくれた、縁深い場所でもあります。

 
 

 
 
 
  
 
 

 


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