桜の中で

 第15期生のスタートを迎える。
 今日は顔合わせと、その後で、座員も交えた宴会を。

 こんなに花見にうってつけの時はない。
 いつも寒かったり、雨だったり、何より花が散って跡形もなかったり、なかなかうまくいかないのだが、今年は満開である。

 んが、今年は自粛で、
 錦糸公園が真っ暗である。真っ暗というか、さりげない電灯だけに照らされた桜も良いのだけどね、
 大宴会にはちと不具合である。

 花見ぐらいはやっても良かったのではないかね。
 遠慮なく、敢えてうあー、っと騒いでね。
 でも、それでもきっとこの国の人たちの心には、死者への痛みや、苦しむ人たちへの思いは消えることはないと思うのだけどね。

 ことが桜だけにね。

 桜の木の下で、僕たちは何百年に渡って、生と死を感じ続けてきたのだから。
 
 ともかく今年は昨年以上に研究生も集まり、しかもいつになく男子が多く、活気溢れたスタートとなる。
 ここに先日書いたとおり、今もう一度、若者たちに期待して、やっていきたい。

 ところで桜。
 うちの近くに、立派な桜の並木道がある。
 でもこれが毎年、この時期になると、提灯くくりつけて、あちこちにうるさい明かりを灯す。
 自分は錦糸公園で毎年バカ騒ぎしておきながら、こんなこというのは、矛盾だけど、

 も少し、そっと眺めたらどうよ

 と、ずーっと思い続けていた。
 特別なことは、せいぜい簡単なライトアップにとどめてね。
 そもそも、並木道なので花見するスペースは限られているのである。
 ここは通り抜けて眺めるのに最適なのだ。

 でも、毎年、肝心の花を隠す勢いで、提灯がうるさく光り続けていた。

 それが今年は、何もしていない。
 これが実によろしい。

 桜が自然に咲いて、そこに人間が自然に吸い寄せられて、それぞれに見上げて佇んでいる。
 宴会がないから、ベンチに腰掛け、しばし眺めることも出来る。
 
 浮かれ騒ぐのも桜だけど、
 しみじみと来し方行く末を、思うのも桜である。
 
 今年はそんな桜が特に気分だな。


 風が強い。
 花が散ります。

 


関連記事

この記事のハッシュタグに関連する記事が見つかりませんでした。

アーカイブ