舘形比呂一 と ラッキィ夫妻

 初めての出会いだったそうな。
 タテさまと、ラッキィ夫妻。

 ふたりの振り付けを見てて、タテさまが驚いていた。
 ラッキィさんて深く芝居を読み取って、振り付けなさるのですねえ、と。

 CMで、シュワルツネッガーにヤカンを持たせて踊らせたり、自らゾウのジョーロをアタマに乗せて、悪ふざけしたりしているかつての姿しか、知らないと、そんなイメージしか浮かばないのが、天才・ラッキィ池田。
 邪道の人だと思われてる。
 
 わしもいろいろ仕事するまでは、そうだった。

 完全に色物の人であろうと。


 もっとミュージカルとか、おやりになればいいのに。

 とタテさまが呟く、

 時々はやってるんですけどね。
 まだまだその実力を知る人は少なく、未だに、昔のCMのイメージだけで語られている部分がある。
 ワタシが真面目に、今、最も信頼しているコレオグラファーだと、いろんなとこで紹介しても、とりあえず笑いが起きるみたいな。

 タテさまもご存じなかったらしい。
 
 そんなタテさまのために、今回用意された、ナンバーがいくつか。
 その振り付けが先日あったんだが

 これがまるで、ずーっと組んでやってきたような呼吸の合いかたであった。

 バックダンサーはすでに振りが付いていて、メインのタテさま部分を作り、合体させる作業だったんだが

 タテさまは瞬時に理解し、それを華麗に表現し、周囲を飲み込み、シーンを大きく膨らませてしまう。
 そんな様子を、ラッキィさんが、目を細めてみつめていた。

 脳内ラッキィワールドの、イメージ通りだったのだと思う。
 エリ先生が、微調整している間も、じっとタテさまを見て、
 いいすねえ、と独り言を言っている。

 タテさまはタテさまで、子供みたいに嬉々として、どんどん自由になってゆく。
 約束事としての、振りが付けられていくのに、逆に自由に羽ばたいてゆくような、この不思議。

 これは、運命の出会いだったのかもしれないね。
 大リーグに渡った野茂英雄が、ロスアンジェルス・ドジャースで、マイク・ピアザという、余人に代え難いキャッチャーと出会ってしまったように。
 あるいは、ダウンタウンのギャングになるしかなかった、マイク・タイソンが、カス・ダマトという、老トレーナーと出会い、ボクシングの世界チャンピオンへの道を歩み出したように。

 てか、
 たとえがイマイチ適切ではないが。

 とにかくそういう運命を感じさせる邂逅の瞬間である。

 タテさまは今、オリビアと同時進行で
 アートの感じの パフォーマンス公演に取り組んでいる。
 草月ホールでこの週末に上演される舞台。
 詳細はタテさまのブログなどで確認してね。
 
 で
 その一方で、こうしてエンターテナーの役割も、見事にこなしてゆく。

 稽古場のメンバーに幸せをまき散らして。
 我ら一同、先にこんなに楽しんじゃって、お客様、ごめんねえ、と言う感じだ。

 ラッキイ夫妻も、そういう幅の広さは同じ。

 モダンから、クラシック、おふざけから、前衛アートまで、どんな分野にも適応し、それでいてちゃんと独自の世界を構築してしまう。

 こういうのを真のプロというのだよな、と思った。

 そんなオリビア、自信をもって、お届けします。 
  


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