紺屋高尾

 原作 のタイトル 紺屋高尾 は
 染め物屋である 紺屋(こうや)の職人の久蔵 と花魁の高尾太夫という、
 男女ふたり のことを示す。

 今回の舞台では、設定は現代なので

 紺屋と花魁 というワケにはいかず
 別の設定にしてある。

 周囲のオッサンたちに、よく、設定を現代に変えるということは

 賀来千香子さんは、風俗嬢の役を演じるのか

 と質問を受けるが、さてどうか。

 まあ、吉原の花魁 を現代に置き換えたら、風俗嬢になるというのは、順当な推察とは言えるが

 ちと、
 やりにくいな、それは。

 厚木舞台アカデミーの小学生たちなんかも見に来るしな。

 こないだ稽古に行ったら、
 ラッキィ先生も出演 と大々的にポスターに貼り付けてあった。
 ダンスの先生をして貰っているのである。

 それに
 かの時代の花魁、それも高級な太夫は、単に性的サービス者というだけでなく
 吉原という巨大文化サロンの中の、華麗なコンパニオンとかホステスというべき立場にあった。

 教養もあり、立ち居振る舞いも、しかと仕込まれていた。
 そして、ギャラも高かったし、気に食わぬ客を振ることさえ出来た。

 AKBは 会いに行けるアイドル と言われているが
 さしずめ、カラダまで買うことも出来る、アイドル・タレント であろう。
   
 原作でも、久蔵は、その絵のごとき美しさに一目惚れしたので、
 なんか気持ちよいサービスを受けて、すっかりハマッたというような下半身系の話ではないのである。

 久蔵は、花魁に会うだけのことに 3年必死に働いて作った15両を払うのである。
 ちなみに落語では演者によって展開が異なるようだけど

 普通に職人さんが遊ぶような、安いお店の女郎さんはそんなことはないが、
 高級店の場合、

 花魁を買っても一晩目は、なーんにもしてくれないというのが吉原の掟であった。

 初会は挨拶だけなのである。
 ぞろぞろと付いてくる、お付きの者たちなんかもひっくるめて、ご祝儀を配らされたりして。

 ここで花魁があの人、嫌でありんす とか言ったら、結局なーんにもなく終わることになるという、凄いシステムである。
 で、2回目。
 これを、裏を返す というのであるが、この時、初めて、それらしきサービスが行われるのである。
 
 もちろん、あたしゃ行ったことありませんがね。
 タイムマシンが有れば、ぜひ見学したいとこですが。
 

 そして一方の 職人だけど
 繊維を藍で、紺色に染める 紺屋 である。

 こんや ではなく こうや と読む。

 紺屋の白袴なんて言う言葉がありますね。
 忙しくしている紺屋さんが、自分の袴は白いまま、染める暇がないという。

 そういう仕事の職人さんです。

 これまた、現代では分かりにくい仕事なので、この舞台では使いにくい。

 で、ちょっとネタばらしをすると、この舞台では靴屋の職人にしてあります。
 下町で修理とか下請けとかでしのぎつつ、あつらえの靴 なんか細々作っている、感じの小さなお店の職人さん。

 ま
 最近は、あつらえ もビスポークなんて呼ばれて、ちょいワル系のオヤジたちの、高級な道楽となっていたりします。
 でも、一時は良い靴と言えばブランド系が圧倒的な王様で、下町のあつらえなどは、かなり苦戦していたと思います。

 しかし、道楽者に言わせれば、行き着くところは あつらえなんだそうです。
 ちなみに、私は、まだその経験はありません。

 高いスからなあ、あつらえは。
 前々から大いに、気になっているのですが。
 
 実は
 万年筆だけは、鳥取の万年筆博士 というその筋では有名な、あつらえ品を一年半待ちで、作ったことがあります。

 これはカルテみたいなモノに文字を書き込むことから始まって、私の書き癖とか、筆圧まで考慮して職人さんがこしらえてくれた、たいそうなものです。
 で、見た目は極めて地味なものなんですが、やっぱり使い心地が良く、今では欠くべからざるものになっています。

 たぶん服や靴も、そうなのでしょう。

 でもこの万年筆博士も、一時、あつらえは途絶えかけたという。

 実際、今でも鳥取の店頭には、パイロットとかモンブランとか、有名な既製品も販売しています。
 そんななか、伝説の職人さんが、細々と手作りの技術をつなぎ、コツコツ営業努力とか続けて
 今や、一年待ちの活況に盛り返したさうな。

 残念ながら、その伝説の人は、確か今年、引退してしまったのだけど、後継者が育ち、後を継いでいるようです。

 今回の話、そういう職人の話も盛り込んでいるのですが、この万年筆博士の逸話を個人的には下敷きにしています。

 で
 実は今日、これから、衣裳のドルドルドラニが話を付けてくれた、あつらえ靴の工房に、職人を演じる数人とともに、その仕事の見学に行くことになっています。

 スケジュール表には、職人チーム・遠足と書き込まれていましたが
 本当にちょっと楽しみです。

 これは見学可能なんだね。

 

  

  
 
  



   
 
 
 
 


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