清潔であること
朝から、昨年から特別講師を勤める、お茶の水の文化学院に行って、声優を目指す若者が9割以上を占める、クラスで、
声優も、本物になりたかったら、芝居の勉強をしなきゃイカンぞという話を、三木眞一郎や、ドラマチック・カンパニーの中尾隆聖氏の例を挙げつつ語り、
その後、その隣の明治大学内でやってる、シェイクスピアプロジェクト『冬物語』の場当たりを見守り、
昼からは錦糸町に行って、夕刻まで、『こうやたかお』をしかと稽古し、
その後、またお茶の水に、岡森とともに駆けつけて、
『冬物語』の稽古に監修者として参加した。
何個用事があるんやワシ、と自分で突っ込んだ月曜日。
『冬物語』は学生諸君が実によくやっている。
きっと美しい舞台になるだろう。あとはあんまり余計な口出しせずに、粛々と見守るだけで良いだろうな、と安堵する。
そして今日、もう一つの収穫は
目下の最大の懸案事項の『こうやたかお』
稽古はすでに佳境であるが
しばし『細雪』の旅公演で不在だった賀来さんが、戻ってきてここから、一気に突き進むべき真の正念場である。
そんななか、賀来さんの見せてくれる芝居が、とても心地良い。
昨年の出会いとなった『前田慶次』のまつ役で、なんて清潔な演技をなさる方なのだろうと思ったのである。
姿形が、美しいのは当然ながら、その上芝居に曇りがなく、嫌みがないのである。
そして凛と張る、ゆく通る声。
私はモデルから、よく分からぬままに女優に転身してきたので、自信がないのです、不安なのです、
などと仰りつつ、稽古場でなく、薄暗い倉庫の廊下で、体操なんかこっそりなさってたりして、
何というか、しみじみと奥ゆかしいスターさんなのである。
でも、そういう真摯な姿勢が、演技にもちゃんと現れていて、この誠実さは、人情芝居に、ぴったりだなと、思うのである。
腹黒い人情芝居というのも、それはそれで面白いだろうが
本来の企画から逸脱する、番外編になるからな。
特に今回の公演は、私なりに、今年に起きた悲劇を想いつつ、明日の幸福を願いたい気持ちを込めていたりするから
賀来さんのこの、感じをきちんと酌み取って、皆さんにお届けしたいと切に思う。
それも、まばたきさえ見える小劇場で。
思えば二月の間に、帝劇の大舞台から、座・高円寺の舞台へという、
もの凄い振り幅の、賀来さんである。
こんなに面白く刺激的な試みもなかろう。
相変わらずの休みナシで、ちょっとばかし青息吐息というのが正直なところながら
オジサンは頑張りますよ。
三十周年、三本目の記念公演に、ご声援をどうかよろしく。
厚木の初日の前日は、ゲネをご覧頂いた後の、ブログライター会見も、初の試みとして開催予定です。
詳細は、扉座HPでご確認頂き、ご参加頂けたら幸いです。
