卒業式

 扉座研究所では、卒業式をちゃんとやるのである。
 証書も渡すし、送辞、答辞もある。

 その後、居酒屋だけど、謝恩会もやる。

 昨夜がその日であった。

 ラブ×3 15 以来、久しぶりにメンバーが集まった。

 皆、穏やかな顔だった。
 よく寝て、食って、あの怒濤の闘いの日々が、嘘のように。

 でも、一年前、出会った時とは、ずいぶん違う。
 演劇の顔になっている。

 2年目のマナミが、宴会のお開き後、そろりと寄ってきて

 あたし、青空がちゃんと観られる役者になりますから。

 と言った。
 何のことかと思えば、ラブ×3 で私が出したダメ出しへのアンサーであった。

 その視線の先に、青空があるって設定なんだろ。
 だったら、ちゃんと青空を見てくれよ。

 たぶんこんな具合に、ワシは言ったのであろう。
 言うは易し、しかし、見えない青空をどうやって観るのだ。

 演劇は、常に無茶ブリである。
 でも、この世界には、そこに見えない、お城や海まで、観客に感じさせてしまう、人たちがいて、
 それが、俳優という名で呼ばれているのだ。

 そうだな、そうなってくれ。

 それはささやかな立ち話で、
 立派な、芝居の話、だった。
 
 
 我々の出す、卒業証書には大まじめにこう書いてある。

 私たちの自慢できる俳優になって下さい。

 たしか茅野イサムが、主任だった頃、作ったのが継承されていると記憶するが
 その通りだと、読み上げるたび、私も思う。


 そんな研究所
 早くも、今度の日曜日、16期生のオーディションが行われる。
 新しい価値観が求められる今、行き場を失っている若者がいたら、
 行けと、背中を押してあげて下さい。

 募集中です。




 
 
  


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