初日を開けて

 半分以上、背広組の異様な客席。
 香川から、広島から、瀬戸内政財界の重鎮がご来場だったようだが。
 わたしは『田原総一郎講演会』かと思ったよ。

 劇場には、ご婦人同伴を原則ルールとしたいと、しみじみ思った。

 ま、でも坊ちゃん劇場を応援しようとする人々であり、そんななかにも熱烈なファンの方たちも混じっていて、
 盛り上がった、と思う。

 本邦初演のラッキイ池田考案『開運・おイネダンス』も、まだ誰も知らないはずなのに、一緒にやってくれる観客もおおぜいいて。
 熱いご声援ありがとうございました。
 そしてこれから、長い公演、どうぞよろしく。

 にしても、出演者諸君の緊張ぶりは可笑しいぐらいだった。
 ずっと劇場で稽古して、この空間にも馴染んでいるのに、
 観客で埋まると、別の場にでも立った如くなり、あちこちで、変なことを言っていた。

 鎖国が終わり、シーボルト様が30年ぶりに長崎に帰ってきた。
 はずなのに、3年ぶりになっていて

 3年なら、極めて短期ソッコー帰国じゃん。どうなってるのよ、達郎さん。

 名は伏すが、天下の二枚目も、約18小節、まったく意味不明の歌詞を、爽やかに歌いきったり。

 でもま、それぐらい必死で創り上げて、気合いが入っているということで、気持ちは客席に伝わったと思う。
 
 最も心配だった、仕掛け部門は、完璧だった。
 今回、少ないキャストで、幕末〜明治の激動を見せるのに、猿之助直伝のケレンを多用してる。
 で、これが上手くいかなきゃ、とても困るのであるが
 昨日は、気持ちよくハマって、劇場が熱くなった。

 これから270数回、成功する奇跡を、祈る。
 
 昨日客席で見てて、しみじみ感じたが
 
 おイネさんの物語って、ドラマ界の盲点だったと思う。
 かつて民放の朝ドラになったことはあるようだけど

 幕末で、女が主人公のモノとして、もっと映画になったり、舞台作品になったりして、良かったモチーフだった。
 かくいうワタシも、今回調べるまで、まったくノーマークだったのだから、同じく、ぼんやりしてたのだけど。
 
 このモチーフに出会えたのは、幸運だった。

 素材が良いから、今回みたいに、ミュージカルショーとして、賑やかにやっても
 太い骨が残ってくれる。
 
 でも一回、堅めのストレートプレイでも、やってみたいと思える、モチーフだ。

 小さい頃は、異端の子として、差別されて苦しんで、でもそれがやがて、美しい大輪の花に開花する。
 人生がそのまま、にみくいアヒルの子の構造なんだ。
 ヒロインものの、王道でもある。

 それはともかく
 今回は『幕末ガール』でよかったと思う。
 当初は、インパクトと違和感を大いに狙った、タイトルだけど。
 使ううちに、そして、このタイトルにふさわしい感じを追求するウチに、
 舞台もキャストも日に日に『幕末ガール』になっていった。
 おイネさんの話とか、ぼんやりやると、道徳の教科書とか、お説教モノになりがちだ。他ならぬワシ自身が、お説教は得意技だし。

 でも、このタイトルが防波堤になって、今回ははじけた、ショウに仕上がった。
 あまたの『龍馬モノ』に、肩を並べる、幕末青春モノのひとつになった、と思う。
 女主人公で幕末元気モノは、つかさんの『幕末純情伝』しかなかったと言っていいんだから。
 
 おイネさんが、医者の修行を始めた、西予・卯之町あたり、『幕末ガール』で盛り上がってくれたら、ワシらも鼻が高い。
 『おイネさん学びの町』だと、いかにもだけど
 『幕末ガール』の町となると、ちょっと心躍らないか。
 
 ともあれ、使命を無事果たし、ワシは明日、帰郷。
 次なる課題が待っている。


 


  
 
 

 
 
 
 

 

 
 


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