山本亨さんの話 今度こそ

 台本をあげたのである。稽古に入れる。
 間に合わせた。おれ偉い、パチパチ。

 原作は小説と、テレビドラマ。そのままの舞台化は疑問だったから、かなり脚色した。んが、『つかこうへいよりもつかこうへい』らしく、なっていると確信する。

 もっともこの場合、いつの時代のつかであるかが問題なんだけど。
 わしとしては、わしの10代の終わりから、しばしのあたり。
 つかこうへいを、神だと思っていた頃のテイストである。

 それも古い話だがね。
 昔歌舞伎通が、よく、六代目を見てなくて、歌舞伎を語るな、とか威張ってたもんだけど
 ほぼ同じ感覚です。イマドキの若者には、はあ なに であろうよ。

 先日厚木で、文化芸術特別大使2期目の任命というのがあって、市役所に行って、市長から書状を受けてきたのだが

 その席で、ケーブルテレビとか、地元新聞とかが『つか版・忠臣蔵』のインタビューもしてくれた。

 厚木ではタイトルが『スカイツリー篇』ではなく『あゆコロ篇』に変わる。
 今回は開業で賑わうツリーの膝元のすみだパークで幕を開けて、ラストを厚木で迎えるパターンになっている。
 とうぜん中味も変える。だろうよ。

 当初は、2パターン上演の予定もなかったのであるが
 
 文化財団の重役職員が、スカイツリーは厚木から見えませんと涙目で訴えてきて、

 それもそうだと思い、その深い郷土愛に胸打たれて、
 すみだでやっている間に、厚木版を作ることにしようと思い立ったのである。

 でツリーの替わりに何を据えるのかと考えたとき、浮上したのが
 あゆコロちゃんであった。
 厚木が今、売り出している、地元ユルキャラである。

 ストーリー上、スカイツリーという建造物が、どう想像上の生物 あゆコロちゃんに、入れ替わるのか、
 現時点では、わしにもさっぱり検討がつかない。

 そもそも、忠臣蔵にどうしてツリーが関係有るのか、そこらからして、でたらめな話である。

 しかし、往年のつかこうへいファンなら、そんなの驚くに足らず、まこと当然のことであろうと、
 ご理解頂けることだろう。

 そういう森羅万象をガシガシ取り入れて、自分色に染めあげ、時代と組み合わないで、何の芝居だエンゲキだと、つかさんなら言うだろうよ。
 
 そんな亡き、つかこうへい師の声を魂で聞いて、あゆコロ篇を作ります、とインタビューに答えたのである。

 そしたら、各紙、見出しが
 『あゆコロ、舞台デビュー』
 『あゆコロちゃん、初舞台』
 となっていた。

 恐るべし、厚木メディア、侮るべからず、あゆコロちゃんである。
  
 かくなる上は、最高のデビューにさせてやらねばなるまい。
 踊りぐらいは、いって貰おうか。 

 こないだ、任命式に現れた時は、ちょっと動きが緩慢すぎて、これでは袖からセンターに出るまでに、時間がかかり過ぎだという感じであった。

 まずは、筋トレからやらせたい。

 
 んで、また
 山本亨の話が出来なかった。
 次回に期待して下さい。



 
 
 


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