魚喃キリコ画伯の話

 長らくお待たせ致しました。
 チラシが出来上がりました。
 劇団員出演公演などで、徐々に撒きはじめているので、そろそろお手元に届くでしょう。

 
 この画が、魚喃キリコ画伯の手によるモノで、しかも私の目の前で何者かに取り憑かれたようになって突然、描かれたものだということは、すでにご報告済みですが、

 いったい、どこまでが画伯の画なのか、
 
 今日はこれを明らかにしましょう。

 まず画伯は、打ち合わせで入った代沢のカフェで、白い紙を一枚出され、あと黒いサインペンみたいのも取り出されました。

 私は、ああ、打ち合わせでも、画を描くのだなあ、と思っていたら、さにあらず。

 今から、製作に取りかかります。
 しばし、好きなコトして待ってて下さい、となったのでした。

 で、サラサラと描き上げられたのが、男と女が、何か液体を垂らし合いつつ、接吻している画でした。

 今もチラシにありますね。
 その画です。
 何回か、違う!とか言って、一枚は破り捨てられ、
 また途中で、修正液をコンビニまで走って買いに行かれ、微妙なラインを何度も引き直しておられました。

 それはまさに作品製作現場って感じでした。

 で、描き上がったかと思ったら、やがて、その紙の画の周辺部をビリビリと破き始められました。

 今のチラシにも、破れた跡が残っていますね。
 あれは、画伯が自ら破られた痕跡です。

 んで、その後、しばし、その紙を眺められていたかと思うと、
 今度は、破きとった方の紙切れを、目の前に置き、

 おもむろに黒ペンで塗りつぶし始めました。

 で、それが真っ黒になると、お店の人にセロテープ貸して下さい、といって、
 その黒い紙切れを、画のある紙に、貼り付けたのでした。

 よし。

 と力強く言い、
 画伯は、説明して下さいました。

 ベロにみえるし、
 血溜まりにも見えるよね。
 あと、女の陰毛部とか
 おチンチンとかね。

 で、
 これを何か、雑然とした部屋の壁に
 パッと貼り付けた感じにしてくれたらいいな。

 何か気になるから、貼っとこ、みたいな感じてね、うんうん……よし。

 といいつつ、カフェの壁に、押しつけて見せた下さったのでした。

 で、この一部始終を、アートーディレクター・ヒネノ氏にお伝えし、デザインして頂いて、このようなチラシが出来上がったというワケです。

 よって、

 画伯の画は、破れた紙の画と、それに張り付いた何か黒い塊の部分
 
 ということになるのでした。

 今思い返しても、それは不思議な時間でした。

 画伯と待ち合わせてお会いしてから、
 この作品を頂いて帰るまで4、5時間ほどだったかな。

 ああ素晴らしいとか、面白い、とか。
 そんな普通の感想が入り込む余地のない感じで、

 ああ、出来上がってく。
 ああ、出来た……

 て具合でありました。

 一見、素っ気ない感じですけどね、

 見れば見るほど、いろんなモノが見えてくるチラシになったんじゃないかと思います。

 破れた部分もね、
 かなり拘って、ビリビリやっておられましたからね。 

 それを向かい側に並んで座り、息を詰め、じっと見詰めている、私と赤星、男二人の顔はかなり間抜けであったと思いますが。


 そして、黒い部分が
 何と言っても、

 謎であります。


 塗りつぶした黒い紙を、画の紙に装着したとき、
 画伯は、

 うしし……

 みたいに、一人ほくそ笑んでおらましたが。


 
 このチラシが出来た時の話は、面白いので、続きます。

 お手元にない人は、何とか手に入れてみて下さいナ。 
  
 


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