先生の左側

 先生は告白します。

 先生は、とてもダメな人です。

 押し迫る仕事たちのストレスのせいだと言い訳しておきますが、
 最近は、その解消にばかり励んでいます。
 それは

 海物語DX という活動です。分かる人だけ分かって下さい。

 DX って、今書いてても、なんか毒ガスみたいな感じです。
 なにがDXだ、おぞましい。
 
 そうです。
 かなり痛めつけられています、もう心が折れそうです。
 独り言で、何度もぐわーーーーーーっと叫んでいます。

 このDX 350回ぐらいアタックしたら、一度ぐらい成功するはずなのです。データではそうなっている。
 しかし、先生に対しては、きっとストレス解消の業界がいじわるをしているのだと思います。
 先生なんかストレスの上に、さらにストレスを乗せて、死んでしまえばいい。
 きっとそう思っているのに違い有りません。
 
 だってストレス解消の業界が、人をこんなに苦しめるなんておかしいじゃありませんか。
 死ねばいいと思ってるんだ、ぜったいに。

 なんでそんな意地悪をされなきゃいけないのか。
 先生は、19の浪人時代から、今に至るまで、一時期スロットという別種に浮気したことはありますが、
 ほぼ三十年近く、業界を支えてきたんですよ。

 なのに、業界め。

 店の入り口とかで監視してて、あ、あいつが来たぞ、とか情報回して、すかさずマシンの裏側に係員を入れて、
 先生のことずーーーーーーっとマークして、本当は当たりなのに、秘密の取り消しスイッチとか押して、

 スカばかり引かせるようにしているに違い有りません。

 じゃなきゃ、おかしいんです。
 先生はもう千回以上。DXを回しているのに。

 しかもその前には、千回転まではいかずとも、かなりぶっ込んで、やっと当たりを引くと、それがアンコウだったということが、三回続けておきました。
 当然、昇格も復活もなく、単発終了。
 全部、飲まれ です。

 アンコウは、観るのもイヤです。

 どうせアンコウなんだろ、アンコウだろ。
 先日、スタバで、意味もなく一人呟いている自分に気づいて、ちょっと怖くなりました。

 しかし、それぐらいアンコウ地獄なんです。

 トビウオチャンスも目下、4回連続で、ガセを掴まされています。
 チャンス突入から、衣裳違いチアダンス、真ん中姉さん花束持ち、その後、枠飛び越えまで来て、サンゴ山になり、結局外れとか。

 もう、おちょくられてるとしか言いようがありません。
 
 先日、そんなトビウオチャンスに突入後
 隣のオバサンが、おっ来たねえ、とか言って覗いてきて、それでも外れたとき、あーーー、と言って、ニヤニヤ笑いやがったんですが
 先日の人間ドックの測定で、下が50しかないない、低血圧の先生がカーーーーーーッ となり

 オバハンに、グーパンチしたろか、と真剣に思いました。
 さすがに、リアルにはムリですから、
 かわりに手がジーンとしびれるほど、台を叩きました。
 
 オバハン、ちょっとギクっとしてた。
 いい気味です、
 低血圧にだって、殺意は芽生えます。

 そんな時、先生は乱暴者です。
 しかし先生だって人間なんだよ。ダレだって、業界から、こんなふうに嫌がらせされ続けたら、乱暴者にだってなりますよ。

 たまに、出ない腹いせに台を蹴飛ばして、マシンを破壊したなんて強者がいて、ニュースになっていますが
 先生は、その気持ちはよく分かるし、有る意味、偉い、とも思います。
 悪いのは、そんなふうに人の心を弄び、踏みにじるマシンだし、業界です。
 先生だって、もう少し血圧が高ければ、やりかねないよ。

 ちなみに、その後、三百以上回して、閉店終了になりました。低血圧の先生の、薄い血が、確かに逆流してました。

 先生は、もうどこまでも行く覚悟だったんです。
 なんなら、銀行にある分全部、注ぎ込んだっていいんだぜ。
 殺せるモノなら殺してみろ。ヒリヒリするぜ、だがそれがいい。

 という、まるで、しんがり戦を闘う決意の、前田慶次でした。

 が、店が終わりじゃ手も足も出ません。
 ラスベガスみたいにエンドレスにしてくれたらいいんだ、業界も。
 そうしたら、スッキリと決着が付く。
  
 下らぬ平穏より、とことん極めて死ぬことを悦ぶのが、我ら傾奇者なんですからね。

 その夜は、悔しさで、眠れませんでした。
 当然ストレスは、溜まる一方です。

 すみません、分からない人には何のことだか、まったく分からないと思いますが

 せっかくなので、ひとつ、耳寄りなことをお教えしましょう。

 先生の左隣は、必ず大当たりします。

 それも、苦しんでいる先生をあざ笑うかのように、あっさりと大当たりし、そりも必ずスーパーラッキィで

 やがてステキな水着姿のマリンちゃんたちが、何度も何度も、祝福の歌と踊りを繰り返してくれます。

 もしお店で、先生を見かけたら、迷わずその左隣に座りましょう。
 先生の百倍ぐらいの高確率で、あなたに幸運が訪れます。
 つまり先生が、一万円使うのに対して、あなたは百円ぐらいで良いということです。
 どうです、この不公平。
 でもそれが業界の方針なんだ。

 あなたリーチはつねに、タコとカニの安心と幸福のダブルリーチ。
 クジラッキーも居続けです。
 やかましいぐらい、キュインキュイン、マシンが鳴ります。

 店員を呼び続けないと、たちまち玉が詰まってしまいそうです。
 下皿レバーを引いて下さいと、マシンが何度もあなたにお願いするでしょう。
 
 先生に対しては、何一つ、語りかけてこないマシンがね。

 そして
 あなたのドル箱は、たちまち、私の背後の領土にまで浸食して、巨大な山脈を形成することでしようよ。
 まあ、どうせこっちは、出ても、アンコウ分の一箱ですから、台テーブルだけで事足りて、
 背後の領土なんかまったく不要なので、いーんですけど。

 その時、あなたの右横で、
 先生は、きっと、うつろな目で蒼白になっていると思いますが、
 どうか、そっとしておいて下さい。
 
  


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