眠れそうにないので

 『幕末ガール』の千秋楽が終わって、地元の焼鳥屋で、新作『げんない』チームも混じっての大宴会やって。
 
 今、利楽村にたどり着く。

 カーテンコールに舞台に呼び出されて、挨拶とかして、みなで最後に、
 『ラスト・メッセージ』を歌おうという手はずになっていたわけである。

 ま、ここらまでは、予定のこと。
 自分で考えたことでもある。
 
 ところが、その最後の歌を、みなで歌っている時のことだ。
 空からチラチラと桜の花が降ってきた。

 舞台と、客席とに。ハラハラと。

 実はそれは、予定になかったことだ。
 
 その花吹雪を見て、グッと胸が詰まり、涙で景色が霞んだね。

 昨日、劇場のスタッフと、カーテンコールの段取りを打ち合わせている時に、チラっと聞いたのだ。

 この小屋には、花びらとか、紙吹雪とか、余ってるのあるかい、と。

 扉座では、別の芝居で使った、桜とか、銀雪とかの残りが、けっこう保管されていたりして、
 カーテンコールのときなんかに、降らせたりすることが時々ある。

 そういう余り物が、ここにもあるかと思ったのだ。
 残念ながら、それはなかった。

 平均年齢30ぐらいの、この劇場の若いスタッフたちは、今から用意しますか、と聞いてきたんだが

 彼らは今、『幕末ガール』とともに、新作『げんない』の製作にもかかっていて、大変なときである。
 これ以上に、雪かごの手配とか、花びら切りとか、手をわずわらせちゃイカンと思って、

 ああ、いい。いらないから、忘れて。と。

 私は言ったものよ。それで終わったと思ってた。

 それが今日、歌の時に、ふいにハラハラと落ちてきたじゃないか。
 坊ちゃん劇場の今の仕込みに、雪かごなどの、紙吹雪降らせ装置を仕込む余裕はない。

 スタッフが、すのこ と呼ばれる小屋の天井まで上って、手で降らせたのである。

 頼んだ以上の、仕事である。
 何と温かく、美しい、花びらだったか。
 
 ベテランのいない、若いスタッフたち。
 しかも、極めて少人数、ギリギリで回している。過酷な職場だ。

 だがその一方で、その若者たちが、これだけ心のこもった、ワークをしている。
 損とか得ではなく、芝居を愛して、舞台のためにすべてのチカラを尽くす。
 素晴らしい舞台人たち。

 信じられるスタッフたち。

 坊ちゃん劇場 は良い劇場だと、声を大にして、全国に伝えたい。
 
 劇場の神様にとっても、きっと居心地が良いに違いない。

 気むずかしくわがままな、神様も今日は、1日、ここにいてニコニコしていてくれた、という気がする。

 良い夜だ。
 寝るのが惜しいね。

 最近、一週間おきに、良いことがある。
 すべて『げんない』に向かうエナジーに変われと、強く念じる。
 
 
 
 
 
 
 


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