土曜日は……
なんか大物に、一度にお会いした日であった。
まずお昼に、滝悦子さん、という福岡在住のエッセイストの方と約束があり、美味しいお寿司なんかご馳走になった。滝さんには『アゲイン』で福岡に行った時に、ラジオ番組のゲストに呼んで頂いてから、何かとお世話になっている。『猫と針』で福岡に行った時にも、福岡一というお寿司屋さんでご馳走になった。
今度は東京だから、本来なら私がご接待すべきなのに、その福岡一のお店出身の人がやってる東京一のお店が、新橋にあるからきんしゃい、とまたゴチになってしまった。
その席で、
今ベストセラーになっている『反転』という本の、著者・田中森一さんをご紹介された。
この方、元は敏腕検事だったのが、上層部との衝突で退職後は裏社会の人たちの弁護士になり、石橋産業事件というやつで起訴されて、ただ今、上告中という方だ。
この世の表と裏を知り尽くした方である。『反転』は血湧き肉踊り、尚かつ、この世の秘密がよく分かり、そして人間とは何かを深く考えされてくれる、大傑作なので、ぜひ読んで頂きたい。
そんな方々と並んで、きめ細かい仕事がしてある美味しい、お寿司を頂く贅沢……
まあ、確実に、1年半は刑務所でしょ。その後は私は、若者の育英基金設立に余生を燃やします。
田中さんは、平戸の貧しい漁村のご出身で、学校で学ぶことにも苦労なされた方である。そんなこともあり、そんな決意をなされている。
にしても、僅かのユラギもなく、そんなことをサラリと仰有る胆力。
この社会における、善と悪は、相対的なものです。
しみじみと深いお言葉であった。
その後、稽古場でラブ×3 R36 の稽古を見る。
夕方からは、今度は、猿之助さんとのお食事会に。
先月、京都で久しぶりにお会いになったという、梅原猛さんが、新聞のコラムに同じようなことを書かれていたらしいが、
ここ数ヶ月の猿之助さんの気力と体力の回復具合はめざましい。
実を申して、昨夜も、来年以降で、何かを始めるための雑談会であった。
さて、何をどうやろうか。
かなり具体的なことをアレコレとお話しした。
某ホテル内の、料理屋さんで。
お昼に続いて、これまた、ものごっつい、ご馳走であった。
何たる幸運。
だけど、四十半ばを越えたオッサンには、少々、トゥーマッチ。
なんでこんな日がせめて一日ずれて来ないかね、と思ったことよ。
帰りがけ、猿之助さんから、
いつからメガネかけてるの?
と訊ねられた。
それは確か、ご病気中のことだった。
メガネ姿でも、何度かお会いしているんだけど、
病気中のことは、ほとんど忘れてしまった、そうである。
何か、ちょっと長い旅から、帰ってこられたのだ、という感じである。
ともあれ、
目出度い。
またタイヘンな日々の復活かもしれないんだけど、
この世には、やり甲斐 という言葉があって、そういう甲斐に巡り会えることほど、幸いなことはないのだから。