ぶっ殺してくれ
新水滸伝 強化週間です。
明日から大阪入り。で舞台稽古。
一昨年は名古屋での上演だったので、ワタシの周りでも意外に見てない人が多い。銀座で見たよと言ってくれる人は多いが。
しかし、初演後、三代目猿之助=猿翁 から呼び出しがあって
女方を上手く使って、おもだか水滸伝として、良くできてたけど、
どうしても納得できないところがある。
むむむむ。
右近演じる、リンチュー の敵、悪代官のコウキュー を
なんで逃がしてしまったのですか。
あんなヤツはぶっ殺さなきゃダメでしょう。
ぶっ殺さなきゃ と言っても、水滸伝の原作がそうなっているのである。
大敵コウキューは、何度も敵対しつつも最後まで生き延びて、終わり近くはなぜか梁山泊と手を結び、外敵と闘うようなことになっていく。
なにせ108人の悪漢の物語なので、代表的悪役を、簡単には殺せないという事情が原作側にあったのだと思う。
闘うべき敵が消えたら、困るからね。
ただそこが確かに物語として弱くて、水滸伝の後半が退屈になっている理由とも言われている。
ネタ尽き、というか。
とはいえ、コウキューは代表的な登場人物なので、原作に従っていたのであるが
ぶっ殺せ という命があった。
そして名古屋での再演が決まったとき、真っ先にメッセージが猿翁から届いたのだった。
コウキューをぶっ殺して下さい。
ただその一言。
そこまで言われたら、やるしかない。
で初演では生き延びた コウキューが、名古屋版では、客席中で展開する大立ち回りの末に、
ぶっ殺される、話に変わったのだ。
変わったって、かるく言うけど、大改訂である。そのために演出もかなり変更したし
ま、立ち回りが当社比で倍増、宙乗りという大技まで投入の運びとなったわけで。
そりゃ、派手で楽しくなりましたが。
こっちは大変よ。
そんなことはお構いなく、
客席では、コウキューを殺せるようになった展開にご満悦の猿翁が、
やれっ、ぶっ殺せ、と騒いでいた。
しかしね、今となっては、最初からこうすべきだったと思う。話の弾み方が段違いになっているのだ。
なによりも
荒々しい水滸伝らしい。ワイルドだ。
しかし原作では生き延びているんですが
と申し上げた時、猿翁は言ったものよ、
歌舞伎なんだから、殺しましょう。
出来上がってみると、無茶なようでいて、ずっと理に適っている。
実に深遠なダメ出しであった。
そして終わったときに届いたメッセージが
コウキューを殺してくれてありがとう。
大まじめに、そんな書面を頂いたものよ。
そんな新水滸伝、各所さらに練り上げて、面白く仕上がってます。
昨日の掛け声奨運動。
フェースブック仲間の、おもだかの女方・市川喜昇丈が鋭く反応してくれて、
エピソードを披露してくれた。
ある公演に、女子高の総見が入ったんだけど、そこの先生が熱烈なおもだかファンで。
事前に細かくレクチャーし、大向こうの練習までして、観劇に臨んだのだそうな。
んで芝居の間中、歓声と拍手と、掛け声が響き続けたって。
その雰囲気の中、やった舞台は役者たちもノリノリで、終わった後もまったく疲れてなかったって。
正確には、市川喜昇 フェースブックに書いてあるから、興味のある人は覗いてみて。友達申請して下さい。
一座では、ブログとかフェースブックとか、持っている役者スタッフが、連携して、
この舞台、皆さんと共に楽しんでいこうと相談しています。
最高の夏休みの思い出を作りましょう。
扉座ファンの皆様にも、ぜひ見ていただけたら幸いです。
ワタシが普段やってることと、猿翁さんたちとやってることは、一見別世界のようですが、
実は深く繋がっていることが、お分かりいただけるかと思います。
そしていつか
扉座と21世紀歌舞伎団の合同公演なんか出来たら
いいよね。