替天行道なりっ

 我らの替天行道が始まった。

 右近さんの、開演前、豪華前説でスタート。
 分かりやすい歌舞伎なんで、どうか気楽に、手を叩き、かけ声をかけて、楽しんで下さい。
 その方が、役者がドンドン、木に登ります、と。

 その効果もあって、
 芝居が進むにつれて、黄色い声が、場内のあちこちから飛び始めた。

 もちろん私も、三代猿之助の魂を継承し、演出自ら、声を出し続けた。
 残念ながら、今日は、旦那はいなかったが、その分も盛り上げる決意、
 師に替わりて、道を行う。

 天命を悟り、我が行く道を貫く、ささやかな替天行道である。

 でも、こんな素人オヤジの声よりも、じょじょに増えてゆくお客さんたちの声と拍手は、今日の船出の大きな追い風となった。

 はじめてこの舞台を観て、その盛り上げポイントを掴むのは、かなり難しいだろうと思うけど
 不思議と客席と、舞台の息が合わさって、

 待望の相乗効果が生まれていた。
 
 今日の初日は、何よりそこに感動した。

 日頃の大歌舞伎では、役を演じることの少ない、若手がここでは重要な役をそれぞれ担っている。

 彼らが日頃やっている役目は、歌舞伎以外のアンサンブルメンバーの仕事である。
 そこに扉座メンバーも参加しているんだけど
 それはそれで、素晴らしい勉強の機会となっている。

 で
 彼らを輝かせる任務を負う。

 普段は、名を呼ばれることのない人たち。
 でもここでは、呼びたくなる。
 呼ばれるべき立場、責任を担う。
 
 輝くべき義務。
 一歩も引かず、受け止めよ。若手たち。

 もっともっと、みんなの名を覚えてもらって、いろんなところで、声援の声が生まれたらいいなと思う。

 それは大歌舞伎だけでなく、一座で新しい芝居作りをやり続けてきた
 二十一世紀歌舞伎組の特権。

 普通の歌舞伎界では、その他大勢担当俳優は、ずうっと、その道を進むしかないものなんだ。
 
 右近も笑也も、この一座でスターになった人たちは皆、そのポジションから、役を演じるチャンスを貰って、観客という強力な味方を増やしてきたからこその輝きなのである。

 みんな市川だから、市川っ!
 だけど
 その下の名が、いっぱいいっぱい叫ばれた時、また新しい扉が開かれ、道が拓かれるだろう。

 千秋楽に、どうなってるか、とても楽しみだ。

 今日の初日を盛り上げて下さった、皆さん、とうもありがとう。
 そして、最後までどうぞよろしく。

 一回では見切れない見所が、たくさん埋め込んである舞台です。未来のスターも、埋め込んであります。
 なかには作った我々も気付いていない、魅力もあるかもしれません。
 ぜひ皆さんの眼力と感性で、発見と発掘をし

 この一座をさらに育てて下さいませ。
  

 なお
 豪華前説は 日替わりメンバーで 行われます。

 お楽しみに。





 

 


 




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