五十肩かっ

 実は半月前から、密かに右手が不自由になっている。

 肩が回らぬ、腕が上がらぬ。

 突然動かしたりしたら、ピキピキピキっと電気が走る。
 五十肩か。

 35歳のはずなのに。

 昨日、大阪新歌舞伎座9月公演『浪花阿呆鴉』の稽古をしていて、
 こうして、敵を切り倒してくれっ

 と厳しい声で演出しつつ、手本のつもりで、手を振り上げたら、
 肩から全身にかけて、稲妻が走った。

 ぐわっ、あべしっ、たゆばら。

 と倒れそうになったが、役者たちがじっと私の動きに見入っているので、そんなワケにはいかず

 その場は、何気ない風を装っていたが、
 死ぬかと思った。

 ずっとPCの前に座り続けた日々が悪いのだ。
 休んでないのがイカンのだ。

 分かっているけど、休むわけにはいかぬ今。

 だましだまし、過ごしている。

 にしてもここ数年、一個ずつカラダのどこかが壊れていくぞ。
 百鬼丸は、一個ずつカラダのパーツを得て生きていくが

 私はひとつずつ失っていくのか。

 しみじみ情けなく悲しいお盆である。



 お前、腕あげたなあ、という言葉があるけど

 腕あげるどころか、動きまへんねん、わたし。
 

 早乙女太一の剣が日に日に早くなり、ここ数日、ついに刃は見えず、光だけしかみえなくなっている、
 その驚きが、最近のエネルギーである。


 


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