泣かないのか、泣かないのか、オレ

 ついに来た初日。
 この日を迎えたら、オレ、泣くよな。と思っていたのは梅雨の頃。

 大阪夏の陣の、その先は、深い霧の中だった。
 本当に、この上に、秋頃、劇団公演が出来るのか。しかも新作でミュージカルなんて。

 考えるのも怖くて、霧の中にそっと置いておいた感じがする。

 で、
 ひとつひとつやり終えて、
 深沢さんに曲を授けて貰い、池田夫妻に振り付けて貰い、古いスタッフ新たなスタッフ、皆の助けで
 ついに辿り着いたこの日。

 しかし、流れるはずの涙は出ず。
 風邪気味の鼻水だけが、ちょろりと垂れた、初日前日。
 
 なんせ、ゲネが明日のお昼になってしまった。
 前日の通しはついに間に合わず。
 明日、お昼にゲネをやって、夜に本番と相成ったワケだ。

 さすがミュージカル。
 それも本気でやってる、生演奏版。

 サウンドチェックとか、ダンスの返しとか。

 やること満載で、時間がかかる。
 
 つまるところ感慨に耽る暇なんかまだ微塵もなく、バタバタと予定をこなし、ゼイゼイとするばかり。

 明日、無事開いて、ひとりになった頃、泣くのかね。

 てか、たぶん泣かないね。
 結局いつもそうだからな。

 どんなにはるかな霧の中に見えた、てっぺんも登ってみたら、もはや霧は晴れていて。
 辛かったことを忘れて、はしゃいでしまう。

 今回なんか特に、歌とか踊りとか、やってみれば、楽しい事だらけなので
 たぶん更に愉快になってしまうんだろう。

 そのうえ、
 いよいよ舞台にも立つしな。
 明日のゲネから。スリッパは当然脱ぐし、衣裳を付ける。

 でこうなると、
 実は、進行する舞台稽古も見ないというか、観ることの出来ない部分が生じるわけで。
 しかも
 自分が出るわけだから、その前は緊張もすれば、誰よりも上手くやってやろうと野心も芽生える。

 人の稽古なんか見てる場合じゃないのである。

 ま、登場シーンが短いのがせめてもの幸い。
 もしこれが長かったら、演出不在になりかねぬところであった。

 ところで
 私へのダメは誰がだすのか。

 前回出た『ホテカル』の時は、なぜか頼んでもないのに、六角がいちいち私に注文を付けに来た。
 ケッコウ口うるさく、もっとソフトにセリフ言えとか、顔が硬いとか。
 出番が終わるたびに、飛んできて、言っていた。

 正直、うるせえなあと思ったもんだが。

 今回はそういう者が見あたらない。
 そうなると、それはそれで不安なものである。

 
 オレの演技のチェック係をきめんとイカンなあと、今、気付いた私である。

 ともあれ
 それやこれやで
 もはや臨戦態勢である。

 イッツ、ショウタイム。

 お楽しみはこれからだ。




 
 
 


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