加納さんとか、猿之助さんとか

 「金しかいらん!」

 なんて強欲な、と思ったら、星野ジャパンでした。
 お金じゃないのね……


 さて
 今日、扉座本隊は厚木仕込み。
 わしはサボリ。キャラメルボックスでは、座長・成井豊氏も、早朝から搬入するそうだが……

 わしは無理っ!


 んで、
 私は、お昼に世田谷パブリックに、20周年を迎えた花組芝居の『忠臣蔵』を観に。5年間、BSで連れ添った相棒、植本潤クンも出ているし。おまけに今回は、猿之助一座で、共に働いてきた石川耕士さんの脚本なのである。

 仮名手本忠臣蔵を2時間半で、ぜーんぶやっちゃうという企画。

 かなり前に歌舞伎座で、朝から晩まで、ずーっと観た経験はあるが、それでも途中、十段目というのはカットしてた。
 今回はそれも含めてのぜーんぶなのだ。
 加納&石川、歌舞伎オタキング&クィーン(?)の二人である。玄人の眼力で観たら、細部にすっごいこだわりがあるのだと思う。けど、わしのような門外漢でも、なるほどこんな話だったのか、とお気楽に全貌が見渡せる明解な長編であった。
 オタクの上に、プロなのである。

 にしても、20年の歳月を思う。
 ずーっと集団というものに対して懐疑的だった加納さんが、ついに劇団を創ると聞いたのが、20年前か、であったかと感慨深い。
 その懐疑を抱くキッカケになったのが、わしらの劇団への客演であったというのも、今や愉快な思い出であろう。
 あんな集まりなんか、絶対嫌だと思ったという噂であった。

花組芝居というのは、
 加納さんと数名除いて、基本的に歌舞伎をよく知らない人たちが団員である。というのが、長く特色であった。加納さんも、知らない方が面白いんだ、と言っていた。
 で、実際、素人達の歌舞伎ゴッコみたいな雰囲気があったものだ。

 でも今日、久しぶりに花組芝居を観てみて、中核メンバーたちが皆、厳密には歌舞伎ではないのかもだけど、気持ちの良い和物の芝居をこなす俳優(わざおぎ、と読んでおこうか)たちになっていた。着物を着こなし、所作もちゃんと板について。
 腰が据わっているというかね。
 
 加納さんが20年やり続けてきたモノが、結実しつつあるのだとしみじみ思った。

 だって、石川さんの本というのは、猿之助歌舞伎などで、松竹の歌舞伎俳優たちが口にする、本格的な歌舞伎語ですからね。
 それを違和感なく、というよりも、歌舞伎とはまた違う味わいで、聴かせてしまうのだから。
 劇団力に拍手である。
 
 幕が下りて、その後そのまま、加納さんのアフタートークがついていて、忠臣蔵豆知識も学べる。
 しかし、その時の、加納さんの貫禄充分なこと。

 一人だけ、先に着替えて、ジャケットと白綿パンみたいな爽やかなスタイルで現れているのに。
 なんちゅうか、若い頃、この人、何者なんだろう?普通に暮らしているんだろうか?と、何かうすら怖ささえ感じた、アングラのカリスマ、みたいな魔物チックな存在感が、そのスタイルの爽やかさ以上に、プンプンと漂っていた。

 加納さん、ついに魔界の人になったな。
 ある意味、生前のテラヤマより、不思議な雰囲気を身に纏っているように私には見えた。
 もちろん誉め言葉です。
 
 ひとしきり、歌舞伎オタクトークを披露した後、
 何か、ご質問はありますか?って。

 芝居終わったとこで、舞台上から座長が聞くかね、普通。
 案の定、座長の迫力に飲み込まれた客席からは、何の質問もなく、大拍手で座長を楽屋にお帰ししたのであった。

 その後、まったく偶然ながら、本家歌舞伎界の怪人・市川猿之助さんとまたまたご飯。
 ☆がつくような御料理屋に、まるでファミレスみたいな感じで、入っていって。二人とも、酒は飲まずに、水とか飲みながら。

 最近、こんな風に超高級ファミレスに立ち寄って、猿之助さんとしているのは、ほとんどマジ・ファミレスで出来るような雑談ダベリ。
 でも、実は、その根底に未来への計画があるのだよ、諸君。
 
 にしても、加納さん、石川さん、猿之助さん、今日の出来事のみんなが繋がる。
 思えば、最近いろんな出会いが重なり合って来ている。
 20年前には、それぞれにまったく別の世界に生きていたとしか、思えない人々だったのに。

 振り返れば皆、同じ川を下り、一つの大海を目指していた。ということか。




 追記
 
 以前から、話題にしてきた、盲目の天才ピアニスト少年(今はちょっと青年)辻井伸行クンのデビューアルバムがついに発売になった。
 クラシックの演奏はもちろん良いが、今回特別に収録された即興的な作曲作品がまた絶品。
 さっきからずっと聴いてます。


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